バイト先のおばさんが、NMNを飲んでいるけれど、本当に効くの?私は1錠だけど、ホリエモンは10錠くらい飲んでいるらしいのよ、私も増やした方がいいかな?と聞いてきたので少し調べてみました。
その前に老化がなぜ進むかの考え方を書いておきます。
細胞は常に酸化ストレスにさらされていて、蛋白質、脂質、核酸が酸化され、機能低下した蛋白質が細胞内に蓄積していきます。それがある一定量になると、細胞は機能不全、もしくはアポトーシスで死んでいきます。
それを補うために残っている幹細胞が少しずつ補っているわけです。
しかし、その幹細胞は同じ理由で徐々に減っていきます。成長期は供給量の方が多いのでどんどん体は大きくなっていきますが、成人すると、それが鈍化するので体のサイズは一定になり、加齢でその供給もかなり減ってきて、体はしぼんでいきます。
女性の場合、頬がコケるのが減っていく現象で、脂肪が増えて太るのも老化現象です。
酸化ストレスは外来性のものもありますが、内在性のものはエネルギー産生で同時に発生します。つまり、エネルギー代謝そのものが酸化ストレスの原因にもなり得るわけです。
エネルギー代謝とは、食事と脂肪の貯蓄、放出です。つまり、食べすぎは良くないわけです。
絶食時間を延ばすことで長生きできると発表されましたが、栄養失調ではそもそもの代謝障害が生じるので良くないわけですし、老人はむしろ、食べすぎの方が長生きするとも言われています。
なので、適度な量を食べて、絶食時間を延ばすというのが基本的に良いのでしょう。
とはいえ、おなかが減りすぎるのも問題なので、絶食時間としては寝ている間を中心に伸ばすのが合理的ですから、早めの夕食を摂って、そのあとは何も食べないくらいが無理のない生活になるでしょう。
さて、ニコチンアミド・モノ・ヌクレオチドは、NAD+の前物質になります。
下記のリンク先の図1を見ればわかりますが、絶食の時に活性化されるのがサーチュイン遺伝子で、それはNAD+と連動しています。NAD+はサーチュインを介して、増えすぎるともうそれ以上増えないようにネガティブフィードバックがかかるようになっています。
そのネガティブフィードバックを無視して、NAD+を増やそうというのが、直前の代謝物であるニコチンアミド・モノ・ヌクレオチドの補充療法です。
サーチュインの活性化で、幹細胞を刺激し続けようという戦略ですね。
ここで問題点となるものを列挙しておきます。
まず、幹細胞にも増殖頻度の限界はあるはずです。それらを活性化して細胞供給を増やすことで若い時に近い機能性を保とうとするのですが、見方によっては、貯金をどんどん使って老化を進めている可能性もあります。
つまり、40代、50代を少しだけ若々しく生きられるかもしれませんが、70代、80代は平均より老化が進む可能性があるということです。
通常の代謝経路を無理やり変更しているので、それに対応して、そのほかの代謝が変化してしまっている可能性があります。もちろん、明らかな病態変化はないので、そこまで危険ではないでしょうが、問題は飲むのをやめたときにどれくらいで正常化するのかという問題です。
また、薬の場合、組織移行性が均一である保証はないことです。だから、少しでも全身に回らせるために点滴療法が民間で行われているわけですが、もともとサーチュイン遺伝子が概日リズムに影響しているので、毎日同じように投与することが望ましく、毎日、同じ時間に点滴するのは無理があります。
最近出た論文ではマウスに1年間食べさせたとありますが、餌のやり方としてずっと食べて続けている状態です。人ではそのような摂取の仕方はしないわけです。
また、データでは活動性が減り、体重の伸びが悪くなっています。これが、精神的なうつ状態にあるためなのか、元気がないためなのか、その辺の解析がされていません。
また、人はストレスで食べすぎになりがちです。つまり、ストレスを減らすことも大事になります。
下記のようにSIRT1の活性化しすぎも良くないという見方もあるようですが、では、どれくらい摂取するとデータのようになるかです。
論文にはマウスに100 or 300 mg/kg/dayで飲水投与されています。人に換算すると、50kgの体重当たり、5gから15g投与となります。
食事には枝豆100gに0.47-1.88mg、ブロッコリー100gに0.25-1.12mg、牛肉100gに0.06-0.42mg、アボカドで100gに0.36-1.60mg入っていて、多いのは枝豆とアボカドみたいですね。
サプリだと4g入っているように見えますが、一粒125mgなので全く程遠い量ですね。食料で取るのも難しい量ではありますが。
10錠飲むのでも焼け石に水っぽいです。水に溶けている状態と錠剤では吸収率も違うのでそれもあります。サーカディアンリズムに影響するので、飲むタイミングも大事なはずですが、そこは検討されていません。
さて、以上のことを踏まえて、では、どうすればよいかについてクラブで解説していきます。
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